近年、映画やドラマで確かな存在感を示し続けている俳優
仲野太賀。デビュー以来、幅広い役柄を自然体で演じ分け、
そのリアリティあふれる演技は多くの視聴者を惹きつけて
やまない。主演・助演を問わず作品に欠かせない存在と
なった彼の魅力はどこにあるのか。本稿ではそのキャリア
と魅力の源泉を紐解いていく。
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下積みを経て芽生えた存在感――初期の出演作
ほんの数分の登場でも、ふと目を奪われてしまう――。
仲野太賀の初期出演作を振り返ると、そうした瞬間が確かに存在している。
まだ名も知れぬ若手俳優であった時代から、彼の演技には“ただの役”を“ひとりの
人間”へと変えてしまう力があった。
端役の枠を超えて観客の心に残るのは、役を誠実に生き抜こうとする熱量にほかならない。
「小さな役にも人生がある」
「最初は本当に小さな役ばかりでした。でも、僕にとってはどの役も大切で。
セリフが一言しかなくても、その人の人生は続いていると思うんです。
台本に書かれていない背景を想像して、できる限り血を通わせたい。
だから、端役でも本気で生きるようにしていました。そうやって積み重ねてきたものが、
今につながっている気がしますね。」
『ゆとりですがなにか』―共感を呼んだ“迷える世代”のリアル
宮藤官九郎脚本の群像劇『ゆとりですがなにか』。
仲野が演じたのは、社会の荒波に翻弄される“ゆとり世代”の若者だった。
夢と現実の狭間でもがき、悩み、時に立ち止まる。
決して派手な役ではないが、視聴者はそこに自分自身の姿を重ねてしまう。
仲野太賀は“演じる”というより“生きる”ことで、世代の代弁者のような存在感を放った。
「あの作品は、自分と同世代の気持ちをすごく代弁してくれる台本でした。
僕自身、共感しながら演じられたし、視聴者の方から“自分のことみたいだった”って声を
いただけたのは嬉しかったですね。自分が役を通して世代のリアルを伝えられるんだって
実感できた作品でした。」
『今日から俺は!!劇場版』――弾けるコメディセンス
仲野太賀さん&矢本悠馬さんからモデルプレス読者にメッセージ💌
映画「今日から俺は!!劇場版」が公開中🎬🎉“紅高”今井&谷川コンビがスクリーンで復活✨#今日俺 #今日俺劇場版 @kyoukaraoreha_n @yuma_yamoto
🔻インタビュー記事はこちらhttps://t.co/waU7qG5SCT pic.twitter.com/CPKtY6JXvr
— モデルプレス (@modelpress) July 18, 2020
シリアスな芝居に定評のある仲野だが、その裏には豊かなユーモアの感覚が潜んでいる。
『今日から俺は!!劇場版』で見せたのは、弾けるようなコミカルな芝居。
大げさなアクションや間の取り方で笑いを生みつつ、キャラクターの愛嬌を失わない。
真剣にふざける、その全力の姿勢が観客を魅了した。
彼が“カメレオン俳優”と呼ばれる所以は、まさにここにある。
「普段はリアル志向の役が多いんですが、あの現場では“思い切りやっていいんだ”と監督から
背中を押してもらいました。
走り方一つでも『もっと変でいいよ』って言われて(笑)。
全力でふざけるって、意外と勇気がいるんですよ。
でも真剣にやるからこそ、観ている人も笑えるんだと思います。」
『この恋あたためますか』――恋愛群像に漂う温度
中村倫也と森七菜が紡ぐ王道のラブストーリー。
その中で仲野太賀は、決して主役の座を奪わず、しかし物語に温かな温度を与える存在だった。
何気ない仕草や目線、少しの沈黙。
その一つひとつが画面に“本物の人間”を立ち上がらせる。
ラブストーリーを脇から支えることで、彼の柔らかな表現力が鮮明に浮かび上がった。
「あの役は、前に出すぎてはいけないけど、物語に温かさを添える存在だったと思います。
だから、仕草や視線の温度を大事にしましたね。
主演のお二人の物語をちゃんと引き立てることを意識していました。」
『拾われた男』――人生の酸いも甘いも演じ切る力
仲野太賀という俳優の真価を世に知らしめたのが、『拾われた男』だろう。
夢破れた青年が人との縁に救われ、やがて新たな人生を歩む物語。
喜び、挫折、怒り、涙――人生のすべてを抱きしめるような演技は、観る者の胸を震わせた。
彼が流す涙は単なる演技ではなく、役を通して掬い取った“生”そのものだった。
仲野太賀はこの作品で、俳優としての確かな到達点を示したのだ。
「あの作品は、役者人生の中でも特別な時間でした。
諭という人間の喜びや挫折を演じる中で、自分自身の人生とも重なって…。
泣くシーンも、感情を作ったわけじゃなくて自然に涙が出てきたんです。
作品を通して“人は誰かに支えられて生きていくんだ”っていう普遍的なテーマを
伝えられた気がします。」
仲野太賀の本質――“変幻自在”でありながら“人間味”にあふれる
ジャンルも役柄も自由自在に飛び越えるカメレオン性。
そして、どんな作品においてもにじみ出る人間味。
仲野太賀の演技を語るとき、この二つを切り離すことはできない。
彼は役を纏いながら、同時に“普遍的な人間の真実”を観客に届けてくれる。
だからこそ、観る者は心を掴まれ、気づけばその人生に寄り添ってしまうのだ。
「本当に特別な作品でした。
モデルになった松戸諭さんの人生は、決して順風満帆ではないんですけど、
人との出会いや支えがあって、少しずつ前に進んでいく。その姿にすごく共感しました。
演じながら、僕自身も何度も励まされました。」
まとめ
すでに数多くの作品で爪痕を残してきた仲野太賀。
しかし、彼の俳優人生はまだ序章にすぎない。
これから社会派ドラマで見せる骨太な演技も、海外作品での新たな挑戦も、
すべてが楽しみだ。
仲野太賀という俳優は、これからも私たちに“人が生きることの豊かさ”を
映し出してくれるに違いない。